⚠️ この記事はネタバレを含みます。
はじめに
廃校が決まった高校、たった二人の最後の新入生――そんなちょっと変わった設定を聞いたとき、どんな物語が待っているんだろうってワクワクしませんか?
百合ナビで新刊情報を見かけて気になっていたこの作品。百合姫に掲載されていたということで、これは間違いない予感がして読んでみたんですが…本当に良かった。ちゃんと胸にしみる、心が動く作品でした🌸
今回は、仁科先生の『春の光に呑まれても』(全1巻)をご紹介します。
廃校の高校に集まった、対照的なふたり
あらすじを簡単に言うと、こんな感じです。
廃校が決まっている高校に入学してきた、最後の新入生・成海と杏。教頭先生から卒業アルバムの制作を依頼されたことで、ふたりの物語が動き始めます。
成海は志望校の受験に失敗して、仕方なくこの学校に入学。1年後の編入を目指して勉強一筋。正直、卒業アルバムの制作なんて面倒だし、杏との関係も最初はどうでもよさそうな雰囲気を醸し出している。
一方の杏は、祖母と母が通っていた学校だからという理由でなんとなく入学した子。特にやりたいことも夢もなくて、卒業アルバム制作は「暇つぶしにちょうどいいかな」くらいのテンション(笑)。
この対照的なふたりが、卒業アルバムという共通のお仕事を通して、少しずつ距離を縮めていく。それがこの作品の大きな柱です。
季節とともに変わっていくふたりの距離
物語は、春・夏・秋・冬と、一年間の季節の移ろいとともに進んでいきます。この構成が本当に好きで。
最初は全然乗り気じゃない成海を、杏が半ば強引に連れ回していくんですよね。成海からしたら正直鬱陶しかったと思うんです。でも春が過ぎ、夏が過ぎた頃には、ふたりはそれなりに打ち解けていて。最初は仲良くなれなさそうだったのに、気づいたらなんか一緒にいる感じになっている――そのじわじわとした変化が読んでいてとても自然でした。
そして秋口。進路のことを考えなきゃいけない季節に差し掛かって、成海は編入試験に向けて一直線。一方の杏は、自分だけ何も決められないまま、少しずつ焦りを感じ始める。
このとき成海がさらりと言うんです。「計算してもどうせ思った通りにならないし、失敗するし」って。
この一言が、何も決められなかった杏の背中をそっと押すシーンになっていて。成海自身は自分が誰かの支えになっているなんて思ってもいないと思うんですけど、気づかないうちに相手に影響を与えている――そういう関係性の描き方がとても好きです。
卒業式後の涙に、私も泣かされました
この作品、クライマックスと言えるのが卒業式後のシーン。成海と杏がふたりで作り上げた卒業アルバムを眺めながら、言葉を交わす場面です。
アルバムを見て、成海が泣くんです。自分がバカだったって。
その涙の意味を読み解くと、胸がぎゅっとなります。入学当初の成海は、「どうせ1年間いるだけ」「卒アル制作なんてなんで自分が」「杏との関係なんてどうでもいい」という気持ちだったはず。でも卒業式を迎えてアルバムを開いたとき、その気持ちへの後悔が溢れてきてしまった。
結果だけ見れば、成海は目標だった編入も果たせたし、何も失っていないはずなんですよね。杏も「それで良かったじゃない」と声をかけてくれる。でも成海はそれだけじゃ泣き止めなかった。
この後悔があったからこそ、成海は杏との関係を今度こそちゃんと大切にしたいと思えた。最初は少し鬱陶しく感じていた杏のことが、気づいたら愛おしくなっていた――その大きな気持ちの変化を、私もアルバムのページをめくるように受け取って、一緒に涙ぐんでしまいました😢
ユニークな設定の中に宿る、普遍的な青春
廃校が決まっている高校にたった二人の新入生、なんて設定は現実にはあり得ないと思いつつ(笑)、だからこそこの物語に特別な空気感が生まれているんだと思います。
ほかの生徒がいない空間で、教頭先生と三人でアルバムを作り上げていく。そのちょっと不思議な状況が、ふたりの関係性を静かに育てる温室みたいな役割を果たしていて。
普通の学園百合でよくある「教室の中での視線のやり取り」とか「部活動での接触」みたいなものがなくて、代わりに「廃校の校舎を二人でカメラを持って歩く」みたいな場面がある。その独自の空気感が、この作品の大きな魅力だと感じました。
作画も可愛らしくて読みやすく、表情の描き方がすごく丁寧。成海の不器用な感じや、杏の柔らかい雰囲気が、絵からちゃんと伝わってきます。
おわりに|この春、一緒に読んでほしい1冊
全1巻で完結しているので、サクッと読み始められるのもうれしいポイント。でも読み終わったあとは、じんわりとした余韻がしばらく続く作品です。
- こんな人におすすめ:
- 学園百合が好きな方
- 不器用な子の心の変化を丁寧に描いた作品が好きな方
- 完結済みでさくっと読める百合を探している方
- 青春の後悔と前向きさが共存する物語に弱い方
「春の光に呑まれても」というタイトルの意味も、読み終わったあとにじわっと染みてくる気がして。春という季節に込められた意味を、ぜひ自分の目で確かめてみてください📚
成海と杏の物語、ぜひ一緒に歩んでみてほしいな🌸

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